怪しい仲間たち2

怪しい仲間たちシリーズ

 

次は、一年前にもここバンコクコワーキングスペースで一緒にいた、ドイツ人くんだ。

 

彼は、怪しくなどない。極めて真面目な男で、堅物といってもいいくらいだ。ただ、タイ人の彼女だけはきっちり作っている。とはいえ、真面目でやさしい男で、僕などは翻訳でわからないことがあると、まっさきにドイツくんに聴く。ネイティブどもは差し置いてだ。なぜなら、まず、嫌な顔ひとつせずに丁寧に教えてくれるし、頭の回転も抜群に速い。僕がなんで訳せないのか、瞬時に把握して、僕がわかる英語に言い換えて教えてくれる。こんな芸当はネイティブのアメリカ人だって誰でもはできない。

 

そんなドイツくんなのだが、僕がまゆをひそめていることがひとつある。それは、プロダクトがなかなか完成しないことだ。

彼はかれこれ、まるまる2年は自身のプロダクトの製作にかかりきりのはずだ。僕が出会ったころ、すでに作り始めて一年が経過すると言っていたので、やはり、足掛け2年たつ計算だ。

彼は、とあるデーターベース系のウェブサービスを始めるべく、会社を辞め、プログラミングを開始したのだ。2年前だ。

 

たしか、去年の3月、ぼくがバンコクを発つ時、あと1−2ヶ月で完成して、売り込みを始めるのだ、と言っていた。

そして、一年後、彼はまだ作っている。最後の仕上げがまだなのだそうだ。まったく同じことを昨年も言っていた。

ただ、勘違いしてはならない。一年間、まったく進んでいないのでなく、確実に進化しているのは見ていればわかる。サイトもプロ仕様でかっこよくなっている。ただ、まだ完成していないだけなのだ。

しかし、このドッグイヤーを通り越して、めまぐるしく栄枯盛衰するIT業界、2年もプロダクトを作っていて、いいのだろうか。。

僕が心配するのはそのことだけだ。しかし、彼はドイツ人。緻密な計算があるに違いなく、ぼくにはドイツ人に意見するほどの見識はない。ただ、「最初のお客がとれたら乾杯しよう」とだけ、毎月言っている。だけだ。

しかし、ここ2年、一切の収入がないはずだ。まあ、奴ほどの頭脳があれば、かなりの高給取りだったに違いない。だからまだまだ生活の心配はないのだろう。それよりもなによりも、2年間コツコツと独力で積み上げ続けられるスタミナと自己管理に脱帽。それだけだ。