親知らずを抜いた顛末と、構造体

2週間ほど前に、親知らずを抜いた。右の下顎だ。

 

注意:以下、痛い記述が続きます。そういうのが嫌いな人は今回はパスしてください。

 

 

 

 

一ヶ月くらい迷ったあげくに抜いた。知覚過敏が出ていて、その原因が親知らずにあると歯医者さんが言う。たしかに心当たりがある。親知らずのスキマは歯磨きがしずらいとずっと思っていた。これはいつか虫歯か何かの原因になる。それはわかっていた。

だが、親知らずを抜いたほうがいいと言われた時、そのとおりだな、と思う反面、気持は、いやだ、と言っていた。前に上の歯の親知らずは抜いたことがあって、とくに痛かった記憶ないので、なぜ、自分がこれほど怖がっているのかわからないな、と思った。ただ、おっくうになっているだけなら、早く決断したほうが、あとあとの歯にもいいはずだった。

で、2週間前に、ついに、抜きます、と言った。少しだけ晴れやかな気持になったが、まだ曇った気持もあった。当日、さすがになんでもそうだが、当日になれば肝が据わるもので、もうどうにでもなれ、とりあえず抜いてしまえば勝ちだ、と思って出かけていった。30分かかると聞いていた抜歯は、10分ほどで終わった。意外とあっけなかったな、それが直後の感想だった。帰宅して、数時間すると麻酔が抜け、痛みがやってきた。まあ、これくらいは覚悟していた。耐えよう。飯がくえないほどではない。思ったりいけそうだ。。

でも、それは甘かった。その夜、頭まで響いいてくる初体験の痛みに、なんだちくしょーっと苦しんでいた。同じ痛みが足先などなら、たぶん、痛いと思いながらも冷静に耐えることができただろう。しかし、歯は、歯というよりもはや顎からこめかみあたりに渡るのだが、そのあたりの痛みは、まあ頭痛と一緒で、冷静になることができない。巻き込まれてしまう痛みなのだ!

 

もう痛みのことを書くのはやめにします。そう、今コレを書いているということは、ご察しの通り、一時の最悪の状態は脱したから書いているのです。なんとか峠は超えたようです。でも、2週間かかった。まだ鈍い痛みは続いている。これは、親知らずを抜こうとしている人をビビらせる意図で書いたのではない。ただ、理不尽な痛みにコテンパンにされたという恨みがそうさせた。書かずにはいられなかったのです。

知人の紹介でホメポパシーをためした。どうやらこれも効いたようである。感謝である。

 

そして、昨夜。印象に残る夢を見た。どれほど印象に残っているかというと、かれこれ丸一日たっているのに、まだ映像を覚えているほどだ。

 

注意2:以下、夢で見た話が続きます。他人が見た夢の話しほど意味不明で退屈なものはありません。奇特な方意外は読まれないことをお勧めします。すみません。

 

 

構造体。それはそう呼ばれていた。この夢はこんなシーンから始まる。どこかいつもの場所から少し歩いていくと、突然、足元のほうが、宇宙になっていて、何かギラギラと輝く都市みたいなものが浮かんでいた。俺はというと、鉄格子を床にしたみたいな、広大な金属の格子状の地面に立っていた。足がすくんでしまう。格子はしっかりした感じはするものの、わりと細い感じで、まるで自分が宇宙の真ん中に立っているような錯覚を覚える。その恐怖だ。そう、東京タワーで、ガラスの床から下を覗いたときのような恐怖感だ。

でも、格子のその下に広がる都市は美しいといえる光の都市だった。巨大でどこまでも広がっていた。すごい光量で、するどいとさえ言える白い、黄色い、光をギラギラと放っていた。もっとも、それが本当に都市なのかはわからなかった。道路や建造物が見えたわけではない。ただ、光の群れでしかなかった。だが、夜の夜景にどこか似ていた。その光量を何百倍にも増したような光景だった。

ふと、気づくと、真正面から電車が走ってきた!音もなく走ってきたのだ。おそらく水色の電車だ。内部から少し光がもれている。もう目の前にくるが、ぼくは足がすくんで動けない!

それから、どうなったのだろうか。どうやらぼくは無事なので、すんでのところで電車が止まったのか、僕が飛びのくことができたのだろう。どうなかったのか、一瞬の記憶喪失のようになっていて、ただ、ぼくは無事らしかった。死ぬかと思ったヒヤっとした感触だけがまだ残っていた。

そうだ、そして、その足元に広がる巨大な都市のことを、ぼくは(近くにほかの誰かがいたような気がするが)、構造体(コウゾウタイ)と呼んでいた。あれが構造体か、などと隣に立っている誰かと話していた気がする。

そして、場面がかわり、ぼくは大きな建物に中にいた。廃墟だった。ショッピングモールか、倉庫か、工場ような場所だった。ぼくは大勢のひとたちと一緒にいた。戦争中か、何者かの襲撃を受けているようだった。外で、犬の鳴き声がした。凶暴そうな犬の鳴き声だった。群衆は恐怖に蒼白となった。その犬は、殺人犬で、敵の(もしかすると異星人の)武器のようなもので、ものすごい勢いでおそってきて、皆殺しにするような奴らしかった。そいつが、右の窓、あるいは壁を破っていまにも入ってくる気配がしていた。僕たちは前方に空いている、壁がくずれた穴へと走った。その向こうへ脱出するためだ。だが、ぼくは途中でへたり込んでしまった。なぜか、足が止まってしまったのだ。逃げなければいけない、あの出口へ飛び込まなくてはいけないのはわかっていたのに。

だがすぐに、左側を並走していたおそらくは女性が走りながらぼくの腕を取り、引っ張ってくれた。ぼくはまた走りだすことができた。気がつけば建物の外に走りだしていた。道路を挟んで向こうに、立木の生け垣が並んでいて、そこに少し切れ目ができていた。あそこに飛び込めば助かる、直感的にそう思う。もう犬が角を曲がって道路に姿を表しそうな気配だった。

気がつけばぼくは群衆の先頭らへんにいた。振り返り、少し躊躇する。俺だけ抜け駆けしていいのか。このまま走れば俺は生け垣の中に飛び込み、助かりそうだ。だが、それは、後ろにつづく群衆が、犬の餌食になるからだ。その間に逃げられるだろうという算段が瞬時に頭をめぐる。

だが、僕の足は止まらなかった。ひたすら走って生け垣の切れ目に飛び込む。犬に見つからないように、すぐに身を伏せた。斜め前方に、カラフルな別の犬がいることに気づいた。体の前半分が白っぽくて、後ろ半分が、紫や黄色でカラフルな縦の虹のようになっていた。毛が長く、胴体も長い犬だった。でも、こいつが、最強の犬で、あの宇宙人どもの番犬にも勝てる、つまりヒーローのような犬であるらしかった。

カラフルな犬はきまぐれそうに、とことこと向こうへ歩いていく。俺は、匍匐前進で必死にカラフル犬のほうへ進む。番犬がここまでやってくる前に、どれだけカラフル犬に近づけるかが生死を分けるのだとわかる。だが、立ち上がってしまうと、すぐそばまで来ているかもしれない番犬に見つかるかもしれない。だから安全策で匍匐前進で近づいていこう。俺はじりじりと這っていく。

 

そして、唐突に目が覚めた。そして、構造体の美しさ、電車にひかれそうになったヒヤリ感、番犬から逃げる恐怖、などがぐるぐるとまだ駆けまわっていた。

そして、ああ、おれはやっぱり少し、卑怯な奴なんだな、と落胆する。またしても自分だけ助かろうとした。そんな気持がじわーっとやってきていた。

 

そして、始めて見たはずのこの夢を、見るのは二回目だと、なぜかしばらく思い込んでいた。いま冷静になると、こんな夢を見た記憶はない。はじめてのはずだ。だが、夢から冷めた直後は、また、構造体の夢を見た。これはいったいなんだろう、と頭をひねっていたことは、おぼろげに覚えている。